GUIDE 05

GIS×AI実践ガイド

空間データとAIの融合

GISとAIを組み合わせることで、空間データの分析・活用が飛躍的に進化します。
VLM(視覚言語モデル)を使った画像解析など、最先端の活用方法を解説します。

約20分で読めます GIS × AI

画像解析からVLM活用まで

GISとAIを組み合わせることで、従来は不可能だった高度な空間分析が可能になります。

このガイドでは、衛星画像解析、VLM(Vision Language Model)活用、ローカルAI連携など、GIS×AIの実践的な手法を解説します。

1. GIS×AIでできること

1.1 従来GISの限界

従来のGISでできること

  • 地図表示・重ね合わせ
  • 空間検索・分析
  • 属性データの管理
  • 手動での分類・ラベリング

従来のGISの限界

  • 大量画像の手動分類は困難
  • 写真からの情報抽出は人力頼み
  • パターン認識は属人的

1.2 AIで広がる可能性

【従来】                    【GIS×AI】

衛星画像を目視で確認        → AIが自動で土地利用を分類
現場写真を1枚ずつ整理      → AIが写真から情報を抽出
地図を見て手動で判断        → AIがパターンを認識

人手では限界があった作業が自動化・効率化

1.3 活用分野の全体像

分野 GIS×AI活用例
測量・土木 点群データの自動分類、変化検出
農林業 作物分類、森林変化検出、獣害予測
防災 被害状況の自動把握、リスク予測
都市計画 土地利用分類、建物検出
環境 植生分析、水域変化検出

2. 画像解析×GIS

2.1 衛星画像の解析

できること

  • 土地利用分類(農地、森林、市街地など)
  • 変化検出(時系列比較)
  • 植生指数(NDVI)の算出
  • 災害被害の把握

使用データ

データソース 解像度 費用 特徴
Sentinel-2 10m 無償 ESA提供、更新頻度高
Landsat 30m 無償 NASA/USGS、長期アーカイブ
ALOS 2.5〜10m 有償/一部無償 JAXA、日本全国
商用衛星 0.3〜1m 有償 高解像度

Python実装例(土地利用分類)

Python
import rasterio
from sklearn.ensemble import RandomForestClassifier
import numpy as np

# 衛星画像を読み込み
with rasterio.open('sentinel2.tif') as src:
    bands = src.read()  # (バンド数, 高さ, 幅)

# バンドデータを整形
X = bands.reshape(bands.shape[0], -1).T

# 学習済みモデルで分類
model = RandomForestClassifier()
# model.fit(X_train, y_train)  # 事前に学習
predictions = model.predict(X)

# 結果をGeoTIFFで出力
classified = predictions.reshape(bands.shape[1], bands.shape[2])

2.2 ドローン空撮の活用

ドローン×GIS×AI

  • オルソ画像の自動生成
  • 3Dモデル(点群)の作成
  • 対象物の自動検出
  • 変化検出

ワークフロー

ドローン撮影
    │
    ▼
SfM処理(PhotoScan, OpenDroneMap等)
    │
    ├── オルソ画像
    ├── DSM(数値表層モデル)
    └── 点群データ
           │
           ▼
    AI分析(物体検出、分類)
           │
           ▼
    GISで可視化・分析

2.3 画像分類・物体検出

画像分類:画像全体を「何か」に分類

  • 例:この画像は「森林」「農地」「市街地」

物体検出:画像内の「どこに何があるか」を検出

  • 例:この画像の座標(x,y)に「車」がある

活用例

対象 検出内容 用途
建物 屋根の形状、損傷 被災状況把握
車両 位置、台数 交通量調査
植生 種類、健康状態 森林管理
インフラ 劣化、異常 点検業務


3. VLM(Vision Language Model)活用

3.1 VLMとは

VLM(Vision Language Model)は、画像と言語を統合的に理解するAIモデルです。

できること

  • 画像の内容を自然言語で説明
  • 画像に関する質問に回答
  • 画像から情報を抽出

代表的なVLM

モデル 提供元 特徴
GPT-4V OpenAI 高精度、クラウド
Claude 3 Anthropic 高精度、クラウド
LLaVA オープンソース ローカル実行可
Qwen-VL Alibaba 日本語対応

3.2 地図・図面の読み取り

活用例

  • 古い紙図面のデジタル化支援
  • 地図記号の自動認識
  • 手書きメモの読み取り
  • 図面からの寸法抽出

プロンプト例

プロンプト
この地図画像を見て、以下の質問に答えてください:
1. この地図はどの地域を示していますか?
2. 主要な道路や河川を特定してください。
3. 目立つランドマークはありますか?

3.3 現場写真の自動分析

活用例

  • 現場状況の自動記録
  • 設備・部品の識別
  • 異常・損傷の検出
  • 作業進捗の確認

実装例(Python + LLaVA)

Python
import requests
import base64

def analyze_image(image_path, prompt):
    # 画像をBase64エンコード
    with open(image_path, 'rb') as f:
        image_base64 = base64.b64encode(f.read()).decode()

    # VLMに問い合わせ
    response = requests.post(
        'http://localhost:11434/api/generate',
        json={
            'model': 'llava',
            'prompt': prompt,
            'images': [image_base64]
        }
    )

    return response.json()['response']

# 現場写真を分析
result = analyze_image(
    'site_photo.jpg',
    'この写真の現場状況を説明してください。'
    '特に、作業の進捗状況と安全上の問題があれば指摘してください。'
)
print(result)

3.4 ローカルVLMの構築

Ollamaでのローカル実行

Bash
# LLaVAモデルをダウンロード
ollama pull llava

# 画像を含む質問を実行
ollama run llava "この画像には何が写っていますか? /path/to/image.jpg"

必要スペック

モデル VRAM メモリ
LLaVA 7B 8GB以上 16GB以上
LLaVA 13B 12GB以上 32GB以上

4. ローカルAI×GIS

4.1 セキュアな環境での運用

ローカルAI×GISのメリット

  • 機密性の高い地理データを外部に出さない
  • オフライン環境でも動作
  • 処理速度が安定(ネットワーク遅延なし)

構成例

【セキュアなGIS×AI環境】

┌─────────────────────────────────────┐
│           社内ネットワーク           │
│                                     │
│  ┌─────────┐      ┌─────────┐     │
│  │  QGIS   │ ←──→ │ ローカル │     │
│  │ ワーク │      │   LLM   │     │
│  │ステーション│      │ (Ollama)│     │
│  └─────────┘      └─────────┘     │
│       │                            │
│       ▼                            │
│  ┌─────────┐                       │
│  │ 社内    │                       │
│  │ ファイル │  ← データは社内に留まる │
│  │ サーバー │                       │
│  └─────────┘                       │
└─────────────────────────────────────┘

4.2 オフライン現場での活用

ユースケース

  • 山間部での現場作業
  • セキュリティエリア内での作業
  • 海外の通信環境が悪い現場

構成

  • ノートPC + GPU(またはMacBook M1/M2/M3/M4)
  • ローカルLLM(Ollama)
  • QGIS + PyQGIS
  • 必要なデータをローカルに保存

4.3 必要なハードウェア構成

モバイルワークステーション

項目 推奨スペック
CPU Core i7-13700H以上
メモリ 32GB
GPU RTX 4060以上(Laptop)
ストレージ SSD 1TB
バッテリー 大容量推奨

Mac(Apple Silicon)

  • M1 Pro/Max以上を推奨
  • メモリ32GB以上
  • ローカルLLMも動作可能


5. 実践事例

5.1 森林管理×AI

課題

  • 広大な森林の状況把握が困難
  • 人手での巡回は時間がかかる

解決策

  • 衛星画像で森林変化を検出
  • ドローンで詳細確認
  • AIで樹種・健康状態を分類

効果

  • 監視コスト削減
  • 早期の異常検知

5.2 災害・被害状況把握

課題

  • 災害時に被害状況の把握が遅れる
  • 現地確認に時間がかかる

解決策

  • 衛星画像の変化検出で被災エリア特定
  • ドローン画像からAIで被害判定
  • GISで被害状況マップを自動生成

効果

  • 初動対応の迅速化
  • 被害全体像の早期把握

5.3 歴史地図アーカイブ

課題

  • 古い紙地図のデジタル化
  • 地図上の情報抽出

解決策

  • 紙地図をスキャン
  • VLMで地図記号・文字を読み取り
  • GISに取り込んで現代地図と比較

miru-lab.jpでの取り組み

  • 歴史地図のインタラクティブ表示
  • 時系列での変化可視化

5.4 ローカルAI×GIS体験デモ

みるラボ(miru-lab.jp)では、ローカルAI×GISの体験デモを公開しています。

デモの特徴

  • 完全ローカル:データ外部送信なし
  • API費用ゼロ:ランニングコストなし
  • 軽量動作:8GB RAMで動作
  • LLM + VLM:テキスト&画像AI対応

機能紹介

機能 使用AI 内容
用途地域判定マップ Gemma 2(LLM) 地図をクリックで用途地域を判定
AIチャット Gemma 2(LLM) 土地・用途地域に関する質問に回答
写真解析 Moondream 2(VLM) 現地写真から建物・地物を説明

5.5 野生動物被害マッピング

課題

  • 獣害の発生状況が把握しにくい
  • 対策の効果検証が困難

解決策

  • 被害報告を位置情報付きで収集
  • AIで被害パターンを分析
  • GISで対策優先エリアを可視化

6. よくある質問(FAQ)

GIS×AIの導入に必要な技術スキルは?

段階的に習得できます。

  • ステップ1:GISの基本操作(QGIS)
  • ステップ2:Python基礎
  • ステップ3:PyQGIS
  • ステップ4:機械学習の基礎
  • ステップ5:VLM/LLMの活用

精度はどれくらい出ますか?

タスクとデータ量によります。

タスク 一般的な精度
土地利用分類 80〜95%
建物検出 85〜95%
変化検出 75〜90%
VLM画像説明 定性的に良好

精度向上には学習データの質と量が重要です。

費用はどれくらいかかりますか?

構成によります。

パターン 費用目安
既存PC + オープンソース ほぼ無償
新規PC購入 30〜100万円
クラウドAI利用 月額数千〜数万円
開発委託 案件による

7. 導入の進め方

7.1 PoC(実証実験)の進め方

ステップ1:課題の明確化

  • 何を自動化・効率化したいか
  • 現状の課題と目標を定義

ステップ2:データ準備

  • 利用可能なデータを確認
  • サンプルデータで検証

ステップ3:プロトタイプ作成

  • 小規模なデータで動作確認
  • 精度・処理速度を評価

ステップ4:評価・改善

  • 結果を検証
  • 課題を抽出して改善

7.2 本格導入へのステップ

【本格導入フロー】

1. PoCの成功を確認
        │
2. 本番環境の構築
   ├── ハードウェア調達
   └── ソフトウェア環境構築
        │
3. 運用フローの設計
   ├── 入力→処理→出力のフロー
   └── 人間によるチェックポイント
        │
4. 担当者の教育
        │
5. 段階的な展開

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最終更新: 2025年1月

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