エッジAI × IoT × GIS 実践ガイド
センサー・ラズパイ・GIS連携で、現場をスマートに。
ロボット開発経験×測量×AIの融合で実現する、現場に最適化されたスマートソリューションの実践ガイドです。
1. このガイドについて
Link Fieldだからできること
Link Fieldは、ロボット開発経験 × 測量 × AIの融合という、他社にはない強みを持っています。
【Link Fieldの強み】
一般的なIT企業 Link Field
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ソフトウェアのみ ハード×ソフト融合
クラウド中心 オフライン対応可能
GIS専門ではない 測量・GIS実務経験あり
ロボット開発経験あり
エッジAI × IoT × GIS とは
エッジAI × IoT × GISは、以下の3つの技術を組み合わせたソリューションです。
| 技術 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| エッジAI | 現場でのリアルタイムAI処理 | 画像認識、異常検知 |
| IoT | センサーによるデータ収集 | 温度、位置、カメラ |
| GIS | 位置情報に基づく可視化・分析 | 地図表示、空間解析 |
なぜ今、現場にエッジAIが必要なのか
【従来の課題】 ・クラウドAIは通信環境に依存 ・通信コストがかかる ・リアルタイム性に限界 ・セキュリティの懸念 【エッジAIで解決】 ・通信環境に依存しない ・通信コスト削減 ・即座に判断・通知 ・データを外部に出さない
2. エッジデバイスの基礎
ラズパイでできること
Raspberry Pi(ラズパイ)は、小型・低コストでありながら、多様な用途に対応できるシングルボードコンピュータです。
【ラズパイの主な用途】 ・センサーデータの収集・送信 ・画像認識(エッジAI推論) ・データの前処理・フィルタリング ・ローカルデータベース ・通信ゲートウェイ
産業用途での選定ポイント
| 項目 | 標準ラズパイ | 産業用途での対策 |
|---|---|---|
| 温度範囲 | 0〜50℃ | 産業用モデル(-40〜85℃) |
| 電源 | USB給電 | UPS、バッテリーバックアップ |
| ストレージ | SDカード | 産業用SD、eMMC |
| 筐体 | なし | 防水防塵ケース |
センサーの種類と用途
環境センサー
【対応センサー】 ・温度センサー(DHT22, DS18B20) ・湿度センサー ・気圧センサー(BMP280) ・CO2センサー ・照度センサー 【活用例】 ・現場の環境モニタリング ・空調管理 ・品質管理
位置センサー
【対応センサー】 ・GPS / GNSS(RTK対応) ・IMU(加速度・ジャイロ) ・傾斜センサー ・コンパス 【活用例】 ・位置追跡 ・姿勢検出 ・変位監視
カメラ・画像センサー
【対応センサー】 ・Raspberry Pi カメラ ・USB Webカメラ ・サーマルカメラ ・深度カメラ(RealSense) 【活用例】 ・監視・検知 ・画像認識(AI) ・測量
距離・測量系センサー
【対応センサー】 ・超音波センサー ・LiDAR(レーザー距離計) ・ToFセンサー 【活用例】 ・距離計測 ・障害物検知 ・3Dスキャン
通信方式の選び方
| 通信方式 | 距離 | 消費電力 | データ量 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|
| Wi-Fi | 〜100m | 高 | 大 | 屋内、大容量データ |
| LTE | 広域 | 中 | 中〜大 | 移動体、広域監視 |
| LoRa | 〜10km | 低 | 小 | 山間部、センサーネットワーク |
| Bluetooth | 〜10m | 低 | 小 | 近距離、ウェアラブル |
オフライン環境での対策
【オフライン対応の方法】 ・ローカルストレージへの蓄積 ・定期的なデータ同期 ・エッジでのAI処理 ・メッシュネットワーク構築
3. エッジAI × GIS アーキテクチャ
システム構成パターン
パターン1: センサー → クラウドGIS
センサー → LTE/Wi-Fi → クラウドGIS 【特徴】 ・シンプルな構成 ・リアルタイム性重視 ・通信環境が必要 ・クラウド利用料が発生
パターン2: センサー → エッジ処理 → GIS
センサー → ラズパイ(AI処理) → クラウドGIS 【特徴】 ・エッジでAI推論 ・通信量を削減 ・異常時のみ通知 ・コスト効率が良い
パターン3: 完全オフライン構成
センサー → ラズパイ → ローカルGIS 【特徴】 ・通信環境不要 ・セキュリティ確保 ・後からデータ同期 ・山間部・地下に最適
データフローの設計
【基本的なデータフロー】
1. センサーでデータ取得
↓
2. エッジデバイスで前処理
↓
3. 必要に応じてAI推論
↓
4. GISフォーマットに変換
↓
5. GISサーバーに送信/保存
↓
6. WebGISで可視化
セキュリティの考え方
【セキュリティ対策】 ・通信の暗号化(TLS/SSL) ・認証・認可の実装 ・ファームウェアの更新管理 ・物理的なセキュリティ(筐体) ・データのローカル処理
4. ローカルAI × エッジデバイス
ラズパイで動くAIモデル
【対応可能なAIモデル】 ・物体検出(YOLO, SSD) ・画像分類(MobileNet, EfficientNet) ・セグメンテーション ・軽量LLM(Llama.cpp) 【推論フレームワーク】 ・TensorFlow Lite ・ONNX Runtime ・OpenCV DNN ・PyTorch Mobile
画像認識モデルの選定
| モデル | 精度 | 速度 | 用途 |
|---|---|---|---|
| MobileNet | 中 | 高速 | 分類、軽量 |
| YOLO Nano | 中 | 高速 | 物体検出 |
| EfficientNet | 高 | 中 | 高精度分類 |
| SSD | 中 | 高速 | 物体検出 |
軽量LLMの活用
【エッジで動くLLM】 ・Llama 2 (7B, 量子化版) ・Phi-2 ・TinyLlama 【活用例】 ・音声入力のテキスト解析 ・レポート自動生成 ・異常の説明文生成
推論速度とトレードオフ
【高速化のテクニック】 ・モデルの量子化(INT8) ・プルーニング(枝刈り) ・知識蒸留 ・ハードウェアアクセラレータ(Coral TPU)
5. GIS連携の実装
センサーデータのGIS取り込み
【データ形式】 ・GeoJSON ・CSV with 座標 ・GPX ・PostGIS直接格納 【取り込み方法】 ・REST API ・WebSocket ・MQTT → GIS変換 ・ファイル連携
リアルタイム可視化の方法
【WebGIS構成例】 ・Leaflet / OpenLayers(フロントエンド) ・GeoServer / PostGIS(バックエンド) ・WebSocket / Server-Sent Events(リアルタイム)
時系列データの蓄積と分析
【時系列データの活用】 ・履歴の蓄積 ・トレンド分析 ・異常検知 ・予測モデル
アラート・通知システム
【通知方法】 ・メール通知 ・Slack / Teams連携 ・LINE通知 ・SMS(緊急時) 【トリガー例】 ・閾値超過 ・異常検知(AI判定) ・長時間の無応答
6. ロボット × GIS 連携
ロボットとGISをつなぐ意味
【連携のメリット】 ・位置情報の可視化 ・経路計画の最適化 ・巡回履歴の蓄積 ・複数ロボットの統合管理
移動ロボット連携
自律走行ロボット × 現場マップ
【対応ロボット】 ・AGV(自動搬送車) ・AMR(自律移動ロボット) ・屋外自律走行車両 【連携内容】 ・リアルタイム位置表示 ・マップ上での経路指示 ・走行履歴の記録
巡回・点検ロボットとの連携
【活用例】 ・警備ロボットの位置監視 ・点検ロボットの巡回管理 ・清掃ロボットのカバレッジ確認
経路計画とGIS
【GISを活用した経路計画】 ・地図データに基づく経路生成 ・障害物・禁止エリアの考慮 ・最短経路・最適経路の計算 ・動的な経路変更
ドローン連携
飛行ログのGIS取り込み
【対応データ】 ・DJI飛行ログ ・GPXファイル ・KMLファイル 【可視化内容】 ・飛行経路の3D表示 ・高度・速度の時系列表示 ・撮影位置のマッピング
空撮画像の自動GIS連携
【処理フロー】 1. ドローン撮影 2. EXIF位置情報抽出 3. ジオリファレンス 4. オルソ画像生成 5. GISレイヤーとして配信
ROSとGISの連携
ROS(Robot Operating System)とは
ROSは、ロボットソフトウェア開発のための オープンソースフレームワークです。 【特徴】 ・センサー・アクチュエータの統合 ・通信ミドルウェア ・豊富なライブラリ ・シミュレーション環境
ROSからGISへのデータ連携
【連携方法】 ・ros_bridge → WebSocket → GIS ・ROS Topic → MQTT → GIS ・カスタムノード → REST API → GIS 【対応ROSバージョン】 ・ROS 1(Melodic, Noetic) ・ROS 2(Foxy, Humble, Iron)
7. 業界別ユースケース
測量・建設現場
【工事進捗の自動記録】 ・定点カメラで定期撮影 ・AI画像解析で進捗判定 ・GIS上で時系列表示 【安全監視システム】 ・作業員の位置追跡 ・危険エリア接近アラート ・熱中症リスク監視 【環境モニタリング】 ・粉塵・騒音の計測 ・振動モニタリング ・水質監視
農林業
【獣害検知・監視】 ・カメラ×AIで動物検出 ・LoRa通信で広域カバー ・GIS上で出没マップ 【圃場センシング】 ・土壌水分・温度計測 ・生育状況のモニタリング ・収穫時期の予測 【森林管理】 ・林分調査の効率化 ・違法伐採の監視 ・森林火災の早期検知
災害対策・防災
【斜面監視】 ・傾斜センサーで変位検出 ・リアルタイムアラート ・GIS上で危険度表示 【河川水位監視】 ・水位センサーネットワーク ・増水予測 ・避難情報との連携 【被災状況把握】 ・ドローン×AIで被害調査 ・GISで被害マップ作成 ・複数チームでの情報共有
研究・調査
【野生動物調査】 ・自動撮影カメラ(トレイルカメラ) ・AI種判定 ・生息域マップ作成 【環境モニタリング】 ・長期定点観測 ・データの自動収集 ・時系列分析 【遠隔地でのデータ収集】 ・ソーラー電源 ・衛星通信対応 ・自律運用
8. 実践事例
獣害監視システムの構築
【システム構成】 カメラ → ラズパイ(AI検出) → LoRa → GIS 【導入効果】 ・24時間自動監視 ・被害の早期発見 ・出没パターンの分析 ・対策の優先順位付け
現場環境モニタリング
【システム構成】 環境センサー → ラズパイ → クラウドGIS 【計測項目】 ・温度・湿度・気圧 ・粉塵濃度 ・騒音レベル ・振動 【導入効果】 ・リアルタイム把握 ・規制値超過の即時検知 ・履歴データの蓄積
オフライン現場での活用
【課題】 ・山間部で通信環境がない ・データをリアルタイムで見たい 【解決策】 ・エッジデバイスでローカル処理 ・ローカルGISで可視化 ・定期的なデータ同期(USB/SD) 【導入効果】 ・通信環境に依存しない ・現場で即座に確認可能
9. よくある質問(FAQ)
ラズパイは産業用途で使えますか?
使えます。ただし、用途に応じた対策が必要です。
- 温度範囲: 標準品は0〜50℃。過酷環境では産業用モデルを検討
- 電源: 安定した電源供給が重要。UPSやバッテリーバックアップを推奨
- ストレージ: SDカードの寿命に注意。産業用SDカードやeMMCを検討
- 筐体: 防水防塵ケースで保護
電源はどうすればいいですか?
現場環境に応じて選択します。
- 商用電源がある場合: AC-DCアダプタ + UPS
- 屋外・遠隔地: ソーラーパネル + バッテリー
- 移動体: 車載バッテリー / モバイルバッテリー
通信がない現場でも使えますか?
はい、オフライン対応のシステム設計が可能です。
- エッジデバイスでローカル処理
- ローカルデータベースへの保存
- 定期的なデータ同期(USB/SD/一時的な通信)
ROSの知識は必要ですか?
ロボット連携をする場合は基礎知識があると有利ですが、お客様側でROSの知識がなくても大丈夫です。Link FieldがROS側の開発・設定を担当します。
導入コストはどのくらいですか?
規模や要件により異なりますが、PoCであれば30万円程度から始められます。
| フェーズ | 費用目安 |
|---|---|
| PoC(実証実験) | 30万円〜 |
| 小規模導入 | 50〜100万円 |
| 本格導入 | 100万円〜 |
保守・メンテナンスは大変ですか?
適切な設計により、メンテナンス負荷を軽減できます。
- リモート監視・更新機能
- 異常時の自動通知
- 予防保全の仕組み
10. 導入の進め方
PoC(実証実験)から始める
【PoCの目的】 ・技術的な実現可能性の検証 ・効果の見える化 ・課題の洗い出し ・本格導入への判断材料 【PoCの期間】 ・1〜3ヶ月程度
小さく始めて段階的に拡大
STEP 1: 1箇所でPoC
↓
STEP 2: 効果検証・改善
↓
STEP 3: 複数箇所に展開
↓
STEP 4: 全体最適化
必要なスキルと体制
【お客様側で必要なこと】 ・現場の課題・要件の明確化 ・運用体制の検討 ・データ活用の検討 【Link Fieldが担当すること】 ・システム設計・開発 ・エッジデバイスの設定 ・GIS連携の実装 ・運用サポート
Link Fieldのサポート内容
提供サービス
- 技術コンサルティング
- システム設計・開発
- エッジデバイス設定
- GIS連携構築
- 運用サポート
- 保守・メンテナンス
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