GUIDE 01

GIS導入ガイド

初心者から始める地理情報システム

GISは、地図上にデータを重ねて「見える化」「分析」「共有」できる強力なツールです。
このガイドでは、GIS初心者の方向けに、基本概念から導入ステップまでを体系的に解説します。

約15分で読めます GIS基礎

初心者から始める地理情報システム

GISは、地図上にデータを重ねて「見える化」「分析」「共有」できる強力なツールです。

このガイドでは、GIS初心者の方向けに、基本概念から導入ステップまでを体系的に解説します。測量・土木、建設、不動産、農林業、行政など、様々な業界での活用方法も紹介します。

1. GISとは

1.1 基本概念と仕組み

GIS(Geographic Information System:地理情報システム)とは、地図上にさまざまなデータを重ねて表示・分析・管理するシステムです。

単なる地図表示ツールではなく、位置情報を持つデータを活用して、意思決定を支援するための仕組みです。

【GISの基本構造】

   地図データ(ベースマップ)
         │
         ├── 道路データ
         ├── 建物データ
         ├── 現場データ ← 自社データを重ねる
         └── 分析結果
              │
              ▼
        可視化・分析・共有

1.2 紙地図・Excelとの違い

比較項目 紙地図 Excel GIS
更新のしやすさ × 印刷し直し ◎ リアルタイム
データ分析 × ○ 数値のみ ◎ 空間分析可能
複数データの重ね合わせ × ×
共有・配布 ◎ Web公開も可能
検索・フィルタリング × ◎ 空間検索も可能

GISを使うメリット

  • 「どこに」「何が」「どれくらい」あるかが一目でわかる
  • 複数の情報を重ねて分析できる
  • データの更新・共有が容易
  • 紙では不可能だった空間分析ができる

1.3 導入メリット

業務効率化

  • 現場情報の一元管理
  • 報告書・地図作成の自動化
  • 情報共有の迅速化

コスト削減

  • 紙地図の印刷・配布コスト削減
  • 移動時間の短縮(事前に現場を把握)
  • データ入力の二重作業削減

意思決定の質向上

  • データに基づく客観的な判断
  • 傾向や課題の「見える化」
  • 関係者間での認識共有

2. 業界別活用シーン

2.1 測量・土木

主な活用例

  • 現場の位置情報管理
  • 測量成果の可視化
  • 工事進捗の地図上での管理
  • 図面と現地の照合
【具体的なメリット】

Before: 紙の図面を現場に持参、手書きでメモ

After:  タブレットで現場を確認、その場でデータ入力
        → 事務所に戻ってすぐに共有・報告

2.2 不動産・建設

主な活用例

  • 物件情報の地図管理
  • 周辺環境の分析(学校、駅からの距離等)
  • 建設予定地の事前調査
  • 顧客への説明資料作成

具体的なメリット

  • 物件検索が直感的になる
  • 営業資料の作成時間短縮
  • 競合物件との比較が容易

2.3 農林業

主な活用例

  • 圃場・森林の管理
  • 作業記録の地図上での管理
  • 収穫予測・計画
  • 獣害対策(被害箇所のマッピング)

具体的なメリット

  • 広大なエリアを効率的に管理
  • 作業履歴の蓄積と分析
  • 補助金申請資料の作成効率化

2.4 行政・公共

主な活用例

  • インフラ台帳管理
  • 防災マップ作成
  • 都市計画の検討
  • 住民向け情報公開

具体的なメリット

  • 部署間でのデータ共有
  • 住民への説明資料として活用
  • 過去データの蓄積と比較


3. GISソフトの選び方

3.1 有償(ArcGIS)vs 無償(QGIS)

比較項目 ArcGIS QGIS
費用 有償(年間ライセンス) 無償
サポート 公式サポートあり コミュニティベース
機能 豊富、統合的 必要十分、プラグインで拡張
学習コスト 教材豊富 日本語情報が増加中
カスタマイズ Python(ArcPy) Python(PyQGIS)
商用利用 ライセンスに準ずる 制限なし

ArcGISが向いているケース

  • 大規模組織での導入
  • 公式サポートが必要
  • 既存システムとの連携が必要

QGISが向いているケース

  • コストを抑えたい
  • 小規模から始めたい
  • カスタマイズ性を重視
  • オープンソースの柔軟性が必要

Link Fieldの推奨

中小企業には、まずQGISからのスタートをおすすめします。無償で始められ、必要に応じて機能拡張できます。

3.2 WebGISとは

WebGISは、Webブラウザ上で動作するGISです。インストール不要で、URLにアクセスするだけで地図の閲覧・編集ができます。

WebGISのメリット

  • インストール不要(ブラウザだけで動作)
  • どこからでもアクセス可能
  • 複数人での同時閲覧・編集
  • スマホ・タブレット対応
  • データの一元管理

WebGISのデメリット

  • インターネット接続が必要
  • 大量データの処理には向かない
  • 高度な分析機能は限定的
  • サーバー構築・運用が必要(自前の場合)

代表的なWebGIS

サービス/ツール 特徴 費用
Googleマイマップ 手軽に始められる、共有が簡単 無償
ArcGIS Online 高機能、企業向け 有償
Mapbox カスタマイズ性高い、開発者向け 従量課金
Leaflet + GeoServer オープンソース、自由度高い 無償(サーバー費用別)
MapLibre GL JS 高速描画、3D対応、オープンソース 無償
QGIS Cloud / QWC2 QGISプロジェクトをWeb公開 無償〜有償
【WebGISの活用イメージ】

┌─────────────────────────────────────┐
│            WebGISサーバー            │
│    (地図データ・属性データを管理)    │
└─────────────────────────────────────┘
         │
    インターネット
         │
    ┌────┼────┐
    ▼    ▼    ▼
  事務所  現場   顧客
  (PC) (スマホ)(PC)
    
 → 同じ地図を全員がリアルタイムで共有

WebGISは自作・カスタマイズできる

WebGISは既製サービスを使うだけでなく、オープンソースのライブラリを組み合わせて自作することも可能です。自社の業務に特化したWebGISを構築できます。

自作WebGISのメリット

  • 業務に最適化した機能を実装できる
  • ランニングコストを抑えられる
  • 複数のオープンデータを自由に組み合わせ可能
  • 顧客向けツールとして提供できる

自作WebGIS事例(みるラボ / miru-lab.jp)

Link Fieldが運営する「みるラボ」では、オープンデータとオープンソースライブラリを活用した様々なWebGISコンテンツを公開しています。

コンテンツ 機能 活用例
日影シミュレーター 建物による日影を時刻別にシミュレーション 不動産調査、建築計画
CS立体図ビューア 地形の微細な起伏を可視化 測量、防災、森林管理
今昔マップ 古地図と現代地図の重ね合わせ 土地履歴調査、教育
地価推移マップ 過去の地価データを時系列で可視化 不動産評価、投資判断
ローカルAI×GIS AIで用途地域判定・写真解析 土地調査、現場確認
【自作WebGISの技術構成例】

┌─────────────────────────────────────┐
│          フロントエンド              │
│  MapLibre GL JS / Leaflet / Deck.gl │
│     (地図描画・インタラクション)     │
└─────────────────────────────────────┘
              │
┌─────────────────────────────────────┐
│          オープンデータ              │
│  ├── 地理院タイル(背景地図)         │
│  ├── CS立体図(地形)                │
│  ├── 国土数値情報(用途地域等)       │
│  └── PLATEAU(3D都市モデル)         │
└─────────────────────────────────────┘
              │
┌─────────────────────────────────────┐
│          バックエンド(必要に応じて)  │
│  GeoServer / PostGIS / Node.js      │
└─────────────────────────────────────┘

WebGIS開発のご相談

「自社専用のWebGISを作りたい」「既存のシステムに地図機能を追加したい」といったご相談も承っております。オープンソースを活用した低コストでの開発が可能です。

みるラボでデモを体験 →

3.3 クラウド vs デスクトップ

比較項目 クラウドGIS デスクトップGIS
初期費用 低い ソフト購入/インストール
月額費用 発生 なし(有償ソフト除く)
アクセス どこからでも PC限定
データ容量 プランによる PC性能による
セキュリティ サービス依存 自社管理

使い分けの目安

  • クラウド:チームでの共有重視、外出先からのアクセスが必要
  • デスクトップ:大量データ処理、セキュリティ重視、オフライン環境

3.3 用途別おすすめ

用途 おすすめソフト 理由
初めてのGIS QGIS 無償、日本語対応
測量・土木 QGIS + Python カスタマイズ性
チーム共有 Googleマイマップ → WebGIS 導入しやすさ
大規模組織 ArcGIS サポート、統合性
開発・カスタマイズ QGIS + PyQGIS オープンソース

4. データの準備

4.1 オープンデータ活用

日本では多くの地理データが無償で公開されています。

主なオープンデータ

データ 提供元 内容
基盤地図情報 国土地理院 道路、建物、標高等
国土数値情報 国土交通省 行政区域、土地利用等
地理院タイル 国土地理院 背景地図(航空写真含む)
e-Stat 総務省 統計データ(境界データ含む)

活用のポイント

  • まずはオープンデータで試す
  • 自社データと組み合わせて価値を出す
  • データの更新頻度を確認する

4.2 自社データのGIS化

GIS化できるデータの例

  • 住所情報 → ジオコーディングで座標化
  • GPS記録 → そのまま取り込み可能
  • 図面(CAD) → 座標合わせで取り込み
  • 写真(位置情報付き) → 撮影地点をマッピング

住所からの座標変換(ジオコーディング)

入力:東京都千代田区霞が関1-1-1
  ↓ ジオコーディング
出力:緯度 35.6762, 経度 139.7502
  ↓
GIS上に点として表示

4.3 データ形式の基礎

よく使うデータ形式

形式 拡張子 特徴
シェープファイル .shp 最も普及、複数ファイルで構成
GeoJSON .geojson Web向け、テキスト形式
GeoPackage .gpkg 新しい標準、単一ファイル
KML/KMZ .kml/.kmz Google Earth形式
CSV .csv 座標列があれば取り込み可能

初心者へのおすすめ

  • まずはCSV(座標付き)から始める
  • 慣れたらシェープファイルやGeoPackageへ

4.4 クラウドデータベースとの連携

Googleスプレッドシートなどのクラウドサービスをデータベースとして活用し、QGISと連携させることで、複数人が常に最新のデータを共有できます。

QGIS × Googleスプレッドシート連携

【クラウド連携の仕組み】

┌─────────────────────────────────────┐
│      Googleスプレッドシート          │
│  (マスターデータベースとして使用)    │
│  ┌─────────────────────────────┐   │
│  │ ID | 名称 | 緯度 | 経度 | 状況 │   │
│  │  1 | 現場A| 35.68| 139.7| 完了 │   │
│  │  2 | 現場B| 35.69| 139.8| 作業中│   │
│  └─────────────────────────────┘   │
└─────────────────────────────────────┘
         │
    自動同期(CSV公開 or API)
         │
    ┌────┴────┐
    ▼         ▼
 QGIS(A氏)  QGIS(B氏)
    │         │
    └────┬────┘
         ▼
  全員が同じ最新データを表示

連携のメリット

  • リアルタイム共有:スプレッドシートを更新すれば全員のQGISに反映
  • 入力が簡単:現場からスマホでスプレッドシートを更新
  • コスト削減:専用サーバー不要、Googleアカウントだけで運用
  • 履歴管理:スプレッドシートの変更履歴で過去データも確認可能

実装方法(3つのパターン)

方法 難易度 特徴
CSV公開URL ★☆☆ 簡単 スプレッドシートをCSV形式で公開し、QGISで読み込み
GASでGeoJSON出力 ★★☆ 中級 Google Apps Scriptで自動変換、高度なカスタマイズ可
QGISプラグイン ★★☆ 中級 専用プラグインで直接接続

実装例:CSV公開URLでの連携

手順
# 1. Googleスプレッドシートの設定
ファイル → 共有 → ウェブに公開
形式:カンマ区切り形式(.csv)
公開URLをコピー

# 2. QGISでの読み込み
レイヤ → レイヤを追加 → 区切りテキストレイヤを追加
ファイル名:公開URLを貼り付け
X座標:経度列を指定
Y座標:緯度列を指定

# 3. データ更新時
スプレッドシートを更新
QGISでレイヤを右クリック → 再読み込み
→ 最新データが反映される

導入事例:現場管理システム

課題

  • 複数の現場担当者がバラバラにExcelで管理
  • 最新情報がどれかわからない
  • 事務所で地図に落とし込む作業が発生

解決策:Googleスプレッドシート × QGIS

  • マスターデータをGoogleスプレッドシートに一元化
  • 現場からスマホで直接更新
  • 事務所のQGISは自動で最新データを表示
  • 全員が同じ地図を見ながら打ち合わせ可能
【導入後のワークフロー】

現場担当A                    現場担当B
    │                           │
スマホで                     スマホで
スプレッドシート更新          スプレッドシート更新
    │                           │
    └───────────┬───────────────┘
                │
        Googleスプレッドシート
          (マスターデータ)
                │
    ┌───────────┴───────────┐
    │                       │
事務所QGIS               管理者QGIS
(A氏のPC)              (B氏のPC)
    │                       │
    └───────────┬───────────┘
                │
        全員が同じ地図を共有
        → 情報の齟齬がなくなる

効果

  • データ入力の二重作業が解消
  • 「最新版はどれ?」問題の解消
  • 現場と事務所のリアルタイム情報共有
  • 専用システム不要でコスト削減


5. 導入ステップ

5.1 小さく始める方法

ステップ1:目的を明確にする

  • 何を解決したいか?
  • どんな地図があれば便利か?
  • 誰が使うか?

ステップ2:無料ツールで試す

  • Googleマイマップで簡単な地図を作る
  • QGISをインストールして基本操作を学ぶ
  • オープンデータを表示してみる

ステップ3:自社データで検証

  • 小規模なデータで試す
  • 1つの業務に絞って適用
  • 効果を確認する

ステップ4:段階的に拡大

  • 成功事例を社内共有
  • 対象業務を増やす
  • 必要に応じてカスタマイズ

5.2 よくある失敗と対策

失敗パターン 原因 対策
導入したが使われない 現場のニーズ不足 現場担当者を巻き込む
データ整備で挫折 最初から完璧を目指す 小さく始める
機能が多すぎて混乱 高機能ソフトから開始 シンプルなツールから
更新が続かない 運用体制が不明確 担当者・ルールを決める
費用対効果が出ない 目的が不明確 解決したい課題を明確に

5.3 社内展開の進め方

推進体制

  • 推進担当者を決める
  • 小さな成功事例を作る
  • 事例を社内で共有
  • 横展開を進める

教育・サポート

  • 基本操作のマニュアル作成
  • 定期的な勉強会
  • 困ったときの相談窓口

6. よくある質問(FAQ)

GISは難しいですか?

基本的な操作は、ExcelやWordが使えれば十分習得できます。

最初は「地図を表示する」「データを重ねる」といった基本操作から始めましょう。高度な分析は必要になってから学べば大丈夫です。

導入にどれくらい費用がかかりますか?

無償ソフト(QGIS)を使えば、ソフト費用は0円です。

主なコストは以下の通りです:

  • ソフトウェア:0円(QGIS)〜 年間数十万円(ArcGIS)
  • 教育・学習:独学〜 研修費用
  • カスタマイズ開発:必要に応じて
  • データ整備:工数(社内 or 外注)

まずは無償ソフトで小さく始めることをおすすめします。

どんなパソコンが必要ですか?

基本的な操作であれば、一般的なビジネスPCで十分です。

推奨スペック(目安):

  • CPU:Core i5以上
  • メモリ:8GB以上(16GB推奨)
  • ストレージ:SSD 256GB以上
  • OS:Windows 10/11、macOS

大量データを扱う場合は、メモリ16GB以上、SSD 512GB以上を推奨します。

既存のExcelデータは使えますか?

はい、使えます。

住所や座標(緯度・経度)が含まれていれば、GISに取り込めます。住所の場合は「ジオコーディング」という処理で座標に変換します。

スマートフォンでも使えますか?

はい、現場での活用が可能です。

  • QField(QGIS連携):オフライン対応、現場入力に最適
  • ArcGIS Field Maps:ArcGIS連携、高機能
  • Googleマイマップ:簡易的な閲覧・編集

現場で入力したデータを事務所で分析、という使い方ができます。

セキュリティは大丈夫ですか?

使い方次第で十分安全に運用できます。

  • デスクトップGIS:データは自社PC内、外部に出ない
  • クラウドGIS:サービスのセキュリティポリシーを確認
  • ISMAP登録サービス:政府基準のセキュリティ

機密データを扱う場合は、デスクトップGISまたはISMAP登録サービスをおすすめします。

7. 次のステップへ

GISをさらに活用するために

基礎を固めたら

AI連携に興味があれば

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最終更新: 2025年1月

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