GUIDE 04

現場DX×AI活用ガイド

AIを活用した業務改善

ローカルLLMを活用して、機密データも安全に処理しながら業務効率化を実現。
中小企業でも導入できるAI活用の実践ノウハウを解説します。

約18分で読めます AI・LLM

ローカルLLMから業務自動化まで

AIは万能ではありません。しかし、適切に活用すれば現場業務を大きく効率化できます。

このガイドでは、ローカルLLMの導入から、GASやExcelとのAI連携まで、現場で使えるAI活用の実践方法を解説します。

1. 現場でのAI活用とは

1.1 AIでできること・できないこと

AIでできること

  • 文書の要約・整理
  • 定型文の生成
  • データの分類・整理
  • パターン認識
  • 質問への回答

AIではまだ難しいこと

  • 100%の精度が求められる判断
  • 最新情報に基づく回答
  • 複雑な業務判断
  • 創造的な意思決定
【AIの得意・不得意】

得意 ◎                      不得意 △
├── 大量データの処理          ├── 最新情報の取得
├── パターンの認識            ├── 100%の精度保証
├── 文書の要約・生成          ├── 複雑な業務判断
└── 定型作業の効率化          └── 責任を伴う決定

1.2 クラウドAI vs ローカルAI

項目 クラウドAI ローカルAI
代表例 ChatGPT, Claude Ollama, LM Studio
費用 従量課金/月額 初期投資(PC)のみ
性能 高性能 PCスペックに依存
セキュリティ データを外部送信 データは社内に留まる
インターネット 必要 不要(オフライン可)
カスタマイズ 限定的 自由にカスタマイズ可

1.3 中小企業でのAI導入の現実

よくある誤解

  • 「AIを入れれば何でも自動化できる」→ 適材適所が重要
  • 「高価なシステムが必要」→ 無償ツールで始められる
  • 「専門家がいないと無理」→ 小さく始めれば大丈夫

現実的なアプローチ

  • 小さな業務から試す
  • 効果を確認してから拡大
  • AIだけに頼らない(人のチェックを残す)

2. ローカルLLM導入

2.1 ローカルLLMとは

ローカルLLMは、自社のPC/サーバー上で動作する大規模言語モデルです。

メリット

  • データを外部に送信しない
  • インターネット不要
  • 月額費用なし
  • カスタマイズ可能

デメリット

  • 初期のPC投資が必要
  • クラウドAIより性能は劣る場合あり
  • 自己管理が必要

2.2 セキュリティ面のメリット

【クラウドAI】
社内データ → インターネット → AIサーバー → 回答
                   ↑
            データが外部を経由(懸念)

【ローカルAI】
社内データ → 社内PC(AI) → 回答
                   ↑
            データは社内に留まる(安心)

ローカルAIが向いているケース

  • 機密データを扱う業務
  • 社外へのデータ持ち出しが禁止されている
  • インターネット接続が制限された環境
  • セキュリティポリシーが厳しい組織

2.3 必要なハードウェア構成

最小構成(軽量モデル向け)

項目 スペック
CPU Core i5以上
メモリ 16GB
GPU なし(CPU推論)
ストレージ SSD 256GB以上

推奨構成(7B〜13Bモデル向け)

項目 スペック
CPU Core i7以上
メモリ 32GB
GPU RTX 3060以上(VRAM 12GB)
ストレージ SSD 512GB以上

高性能構成(大規模モデル向け)

項目 スペック
CPU Core i9 / Ryzen 9
メモリ 64GB以上
GPU RTX 5090(VRAM 32GB)
ストレージ SSD 1TB以上
電源 1000W以上推奨

  ローカルLLMなどのローカルAIの場合、VRAMが大きさで作業のやれることが増えますが処理速度等で用途が若干変わると思っております。

2.4 おすすめモデルと選び方

日本語対応モデル

モデル サイズ 特徴
Llama 3 (8B) 約5GB バランス良い、日本語可
Gemma 2 (9B) 約6GB Google製、高品質
Qwen 2.5 (7B) 約4GB 中国Alibaba製、日本語強い
Japanese-Llama 約5GB 日本語特化

用途別おすすめ

用途 おすすめモデル
文書要約・生成 Qwen 2.5, Llama 3
コード生成 CodeLlama, DeepSeek Coder
質問応答 Gemma 2, Llama 3
軽量・高速 Gemma 2 (2B), Phi-3


3. 推論ベースとルールベース

3.1 推論ベース:可能性と不安定さ

推論ベースは、AIが文脈から判断して回答を生成するアプローチです。

メリット

  • 柔軟な対応が可能
  • 想定外の質問にも対応
  • 人間らしい応答

デメリット

  • 回答が毎回異なる可能性
  • 誤った回答をする場合あり
  • 精度の保証が難しい

適したケース

  • 文書の要約・リライト
  • アイデア出し
  • 下書き作成
  • 一般的な質問応答

3.2 ルールベース:安定性と要件定義の重要性

ルールベースは、事前に定義したルールに従って処理するアプローチです。

メリット

  • 結果が安定・予測可能
  • 精度を保証しやすい
  • デバッグしやすい

デメリット

  • 想定外のケースに対応できない
  • ルール定義に手間がかかる
  • 柔軟性に欠ける

適したケース

  • 定型処理の自動化
  • 分類・振り分け
  • フォーマット変換
  • チェック処理

3.3 使い分けの考え方

【使い分けフローチャート】

精度100%が必要?
    │
    ├── Yes → ルールベース
    │         (または人間が最終確認)
    │
    └── No → 柔軟性が必要?
                │
                ├── Yes → 推論ベース
                │
                └── No → ルールベース

ハイブリッドアプローチ

  • 推論ベースで下書き作成
  • ルールベースでチェック・修正
  • 人間が最終確認

4. 業務別AI活用

4.1 文書作成・要約

活用例

  • 議事録の要約
  • 報告書の下書き
  • メールの文案作成
  • マニュアルの整理

プロンプト例(要約)

プロンプト
以下の議事録を300文字程度で要約してください。
重要な決定事項と次のアクションを明確にしてください。

[議事録テキスト]

4.2 データ整理・分析

活用例

  • 自由記述の分類
  • データのクレンジング
  • 異常値の検出
  • パターン抽出

プロンプト例(分類)

プロンプト
以下のお客様の声を、以下のカテゴリに分類してください。
カテゴリ:品質、価格、対応、配送、その他

[お客様の声データ]

4.3 問い合わせ対応

活用例

  • FAQ回答の自動生成
  • 問い合わせの一次振り分け
  • 回答文案の作成

注意点

  • 最終回答は人間がチェック
  • 機密情報を含む問い合わせに注意
  • 誤回答のリスクを考慮

4.4 レポート自動生成

活用例

  • 日報・週報の生成
  • データからのレポート作成
  • 定型レポートの自動化
【実装パターン】

データ(Excel/スプレッドシート)
        │
    AIで文章生成
        │
    テンプレートに挿入
        │
    レポート完成

5. 自動化ツールとの連携

5.1 GAS×AI連携

Google Apps Script + AI APIの連携例です。

JavaScript (GAS)
function callAI(prompt) {
  const url = 'http://localhost:11434/api/generate';  // Ollama

  const payload = {
    model: 'llama3',
    prompt: prompt,
    stream: false
  };

  const options = {
    method: 'post',
    contentType: 'application/json',
    payload: JSON.stringify(payload)
  };

  const response = UrlFetchApp.fetch(url, options);
  const result = JSON.parse(response.getContentText());

  return result.response;
}

function summarizeText() {
  const sheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet().getActiveSheet();
  const text = sheet.getRange('A1').getValue();

  const prompt = `以下のテキストを要約してください:\n\n${text}`;
  const summary = callAI(prompt);

  sheet.getRange('B1').setValue(summary);
}

5.2 Excel×AI連携

Python + openpyxl + Ollamaの連携例です。

Python
import openpyxl
import requests

def call_ollama(prompt):
    response = requests.post(
        'http://localhost:11434/api/generate',
        json={
            'model': 'llama3',
            'prompt': prompt,
            'stream': False
        }
    )
    return response.json()['response']

# Excelファイルを読み込み
wb = openpyxl.load_workbook('data.xlsx')
sheet = wb.active

# 各行のテキストを要約
for row in range(2, sheet.max_row + 1):
    text = sheet.cell(row=row, column=1).value
    if text:
        summary = call_ollama(f"以下を1行で要約:{text}")
        sheet.cell(row=row, column=2).value = summary

wb.save('data_with_summary.xlsx')

5.3 ワークフロー自動化

【日報自動生成フロー】

1. Googleフォームで作業報告を入力
        │
2. GASがトリガーで起動
        │
3. AIで作業内容を要約・整形
        │
4. 日報テンプレートに挿入
        │
5. 上司にメール送信
        │
6. スプレッドシートに記録


6. 導入事例

6.1 測量・建設業での活用

課題

  • 現場報告書の作成に時間がかかる
  • ベテランのノウハウが属人化

解決策

  • 現場でのメモ入力 → AIで報告書生成
  • 過去の報告書を学習させて文体統一

効果

  • 報告書作成時間:60分 → 15分
  • 品質のばらつき解消

6.2 中小企業での導入例

課題

  • 問い合わせ対応に時間がかかる
  • 担当者不在時の対応が遅れる

解決策

  • よくある質問をAIが一次回答
  • 人間が確認して送信

効果

  • 一次対応時間:30分 → 5分
  • 対応漏れゼロ

6.3 費用対効果の考え方

コスト

  • PC(GPU付き):20〜50万円
  • 導入支援:10〜50万円
  • 運用:社内工数

効果(例)

  • 作業時間削減:月20時間 × 時給2,000円 = 月4万円
  • 年間削減効果:約50万円

回収期間

初期投資50万円 ÷ 年間効果50万円 = 約1年

7. よくある質問(FAQ)

ローカルLLMは本当に使えますか?

使える場面と、まだ難しい場面があります。

安定して使えるケース:

  • 文書の要約・整形
  • 定型的なデータ処理
  • 下書き作成

まだ注意が必要なケース:

  • 高い精度が求められる業務
  • 最新情報が必要な業務
  • ミスが許されない場面

クラウドAIとローカルAI、どちらを選ぶべき?

セキュリティ要件と予算で判断します。

条件 おすすめ
機密データを扱う ローカルAI
すぐに始めたい クラウドAI
月額費用を抑えたい ローカルAI
高い精度が必要 クラウドAI

導入にどれくらい費用がかかりますか?

小さく始めれば数万円から可能です。

パターン 費用目安
クラウドAI(ChatGPT等) 月額2,000〜10,000円
ローカルAI(既存PC) 無償〜数万円
ローカルAI(新規PC) 20〜50万円

8. 導入ステップ

8.1 小さく始める方法

ステップ1:目的を明確にする

  • どの業務を効率化したいか
  • どれくらいの精度が必要か
  • セキュリティ要件は何か

ステップ2:クラウドAIで試す

  • ChatGPT/Claudeで業務に使えるか検証
  • プロンプトのコツを学ぶ

ステップ3:ローカルAIに移行(必要に応じて)

  • Ollamaをインストール
  • 同じ処理をローカルで試す
  • 精度を比較

ステップ4:自動化ツールと連携

  • GASやPythonと連携
  • 定型業務に組み込む

8.2 社内展開の進め方

【社内展開フロー】

1. パイロット導入
   └── 1部署で試す
        │
2. 効果測定
   └── 時間削減、品質を確認
        │
3. 課題抽出
   └── 問題点を洗い出し改善
        │
4. 横展開
   └── 他部署へ展開
        │
5. 定着化
   └── マニュアル化、教育

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最終更新: 2025年1月

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