QGISで地図がずれる原因と直し方【座標系・測地系の落とし穴】

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目次

QGISで異なるレイヤの位置が合わない、地理院タイルと自分のデータがずれる。そんなときの原因の見分け方と直し方をまとめました。


症状別の早見表

「どのくらいずれているか」で、疑うべき原因はかなり絞り込めます。

症状 主に疑う原因
数百m前後ずれる(形は同じ) 測地系の違い(日本測地系と世界測地系)
数km〜別大陸に飛ぶ レイヤのCRSが未設定、または全く別系統の座標系
数十〜数百km単位で平行移動する(形はほぼ同じ) 平面直角座標系の系番号違い
縮尺・向きだけ違う(位置はおおむね近い) 投影座標系の取り違え・単位違い・X/Y取り違え
距離・面積の計算値が現実と合わない 地物情報表示・フィールド計算機がプロジェクトCRSへ変換していない/楕円体設定の問題

まず疑うべきは「レイヤのCRSが正しく認識されているか」です。次章で原因を順に確認します。


原因は主に4つ

(a) レイヤにCRSが未設定・誤設定

CSVの緯度経度列やShapefileの.prjが欠けているなど、元データにCRS情報が無い(または誤っている)ケースです。QGISは.prjやメタデータからCRSを読み取りますが、無い・壊れている場合は「設定→オプション→CRSの取り扱い(CRS Handling)」タブの「レイヤのCRS」設定に従います。既定は「不明なCRSのままにする(何もしない)」で、CRSは自動では割り当てられません。

(b) 測地系の違い(日本測地系と世界測地系)

日本には主に2つの測地系があります。

  • 日本測地系(Tokyo Datum): 旧来の測地系。古い地形図・古い座標データに残っています
  • 世界測地系(JGD2000/JGD2011、現在の呼称はJGD2024): 2002年の測量法改正以降の現行の測地系。国土地理院の地図・測量成果はこちらが基準です(呼称の変遷は後述)

同じ経緯度の数値でも、どちらの測地系かで指す地点がずれます。大きさは地域差がありますが、数百m規模で、東京付近では北西方向にずれるとされています。数値は近いのに地図に置くと明らかにずれる場合はこれを疑います。

(c) 平面直角座標系の系番号違い

日本の平面直角座標系は、全国を19の系(I系〜XIX系)に分けて定義され、各系は原点から東西おおむね130kmの範囲で使う想定です。隣接・別系の番号を取り違えると、原点同士の距離ぶん数十〜数百km単位で平行移動した位置に表示されます(形はほぼ同じまま位置だけずれます)。CSVやDXFでは、どの系のデータかを確認せずインポートすると起こりやすいミスです。

位置はおおむね合っているのに縮尺・向きだけ違う場合は、系番号違いではなく投影座標系の取り違え、単位の違い(メートル/フィート)、あるいは測量座標とQGISのX/Y取り違え(後述)を疑います。

(d) プロジェクトCRSとオンザフライ再投影・地理院タイルとの混在

QGISはレイヤごとに異なるCRSでも、プロジェクトCRSに合わせて自動的に再投影して重ね描画します。旧称は「オンザフライ再投影」(QGIS2までの呼び方)ですが、QGIS3では常時有効な標準動作で、切り替え設定はありません。この機能自体は正常ですが、次のような場合に「ずれて見える」「距離・面積の値がおかしい」という誤解が生じます。

  • 地理院タイルなどのWebタイルはEPSG:3857(Web Mercator)で配信されます。これと日本測地系・平面直角座標系のデータを重ねる表示自体は問題ありませんが、EPSG:3857は緯度が高いほど実距離より引き伸ばされる図法で、北緯36度付近では平面上の距離が実際のおよそ1/cos36°倍(約1.24倍)になります
  • 影響を受けやすいのは地物情報表示(Identify Features)パネルやフィールド計算機の$length$areaです。これらはプロジェクトCRSへ変換せず、レイヤ自身のCRSと(プロジェクト→プロパティ→一般情報で設定する)楕円体設定に基づいて計算するため、地理座標系(緯度経度)のレイヤでは想定と異なる単位・数値になることがあります

見分け方

レイヤプロパティでCRSを確認する

1. レイヤパネルで対象レイヤを右クリック
2. 「プロパティ」→「情報」タブ
   → CRSの名称とEPSGコードが表示される
3. 疑わしいレイヤと基準にしたいレイヤ(地理院タイル等)を
   両方確認し、EPSGコードを比較する

想定と違うEPSGコードが表示されていれば、原因(a)〜(c)のいずれかです。よく使うEPSGコードの対照は次のとおりです。

CRS EPSGコード
日本測地系(Tokyo Datum) 4301
JGD2000(地理座標系) 4612
JGD2011(地理座標系) 6668
WGS84(地理座標系) 4326
Webメルカトル 3857
平面直角座標系(JGD2000、I系〜XIX系) 2443〜2461
平面直角座標系(JGD2011、I系〜XIX系) 6669〜6687

JGD2024は名称変更であり、本稿執筆時点ではJGD2011のコードをそのまま使います(新コードの有無はEPSGレジストリで確認してください)。

「レイヤのCRSを設定」と「レイヤを再投影(エクスポート)」の違い

似ていますが意味は全く異なります。

  • CRSを設定(レイヤプロパティ→ソース): 座標の数値はそのまま、「このCRSの数値である」というラベルだけ付け替えます。元データが本当にそのCRSで作られている場合に使います
  • 再投影(エクスポート): 座標の数値そのものを別のCRSに変換し、新しいファイルとして書き出します。CRSが違う2つのデータを同じ基準に揃えたいときに使います

元データのCRSを取り違えたまま「CRSを設定」しても数値は変わらず、ずれは直りません。どちらが必要かをまず見極めます。

座標を突き合わせる

1. 「地物情報表示(Identify Features)」で、位置が分かっている
   地物(交差点など)をレイヤ側でクリックし座標とCRSを確認する
2. 地理院タイル等のXYZタイル側はクリックしてもラスタ値しか
   出ないため、同じ地点のステータスバー座標表示
   (または「座標をコピー」)で座標を取得する
3. 両者の座標値を比較する
   → 数値の桁や範囲が大きく違う場合、CRSの取り違えが濃厚

直し方

基本の流れは共通です。

1. 元データが本来どのCRSで作られたものかを確認する
   (提供元への確認、メタデータ、ファイル形式ごとの注意点は下記)
2. QGISでレイヤのCRSを正しく設定する
   → レイヤプロパティ → ソース → 座標参照系
3. 他のレイヤと重ねて位置を確認する
4. 必要であれば「エクスポート」→「地物の保存」で
   目的のCRSに再投影して新規ファイルに保存する

日本測地系(Tokyo Datum)から世界測地系へ変換する場合、変換方法(TKY2JGDなどのグリッド変換)を選べる場面があります。「設定→オプション→変換」で優先変換を確認し、単純な楕円体変換だけだと数m規模の残差が残ることがあります。

データ形式ごとに、CRSの持ち方に次のような違いがあるため注意します。

CSVの場合

CSVはそもそもCRSの情報を持てません。緯度経度・平面直角座標のどちらの列か、どの測地系・系番号かを提供元やデータ仕様で確認してから、読み込み時に手動でCRSを指定します。また緯度(lat)と経度(lon)を取り違えると全く違う場所に表示されるため、区切りテキストレイヤ追加時にX・Y項目への割り当てを確認します。

Shapefileの場合

.shpと同じ場所に.prjファイルがあれば、QGISはそこからCRSを自動認識します。.prjが欠けている、あるいは他のファイルと差し替わっていると誤ったCRSで読み込まれるため、.shp .shx .dbf .prjが揃っているかをまず確認します。

GeoJSONの場合

現行のGeoJSON仕様では、座標は原則として世界測地系の経緯度(EPSG:4326)で記述することになっています。CRSを明示するプロパティを持つ古い形式のファイルも存在するため、想定外のずれが出た場合はファイルの中身(テキストエディタで先頭部分)を確認します。

DXFの場合

DXFはCAD由来の形式で、CRSの情報を持たないことが一般的です。系番号違いが起きやすいのはこのケースで、どの系(I系〜XIX系)で座標が入力されたかを設計図書や発注元に確認し、読み込み時に明示的に指定します。加えて、測量座標はX=北・Y=東という並びで扱うのに対し、QGISをはじめとするGISソフトはX=東・Y=北という並びを慣習としています(EPSGの定義自体はX=北・Y=東で測量座標と同じですが、GISソフト側の軸の並びが逆になっています)。この並びを取り違えると、値が正しくてもy=xの線に関して鏡映(裏返し)になったようにずれます。


JGD2000・JGD2011・JGD2024の扱い

世界測地系には、経緯度でJGD2000・JGD2011・JGD2024の3つの名称があります。JGD2011は東日本大震災の地殻変動を反映した改定で、国土地理院によれば令和7年度の全国標高改定にともない名称がJGD2011からJGD2024へ変更されました。定義自体を変えるものではなく、水平位置(緯度・経度、平面直角座標系の数値)はJGD2011の値を引き継ぐため、名称変更だけで表示位置はずれません。

一方、JGD2000とJGD2011/JGD2024の座標のずれは、地殻変動が大きかった地域を除けば実務上ごく小さく、一般的な地図表示では大きな支障になりにくいとされます。境界確定や高精度な位置出しが必要な測量業務では、地殻変動補正を踏まえどの測地系の成果かを明確にします。測量成果としての精度を求めるかどうかで扱いを分けます。


チェックリスト

□ 疑わしいレイヤのCRS(EPSGコード)をプロパティで確認した
□ 「CRSを設定」と「再投影(エクスポート)」の違いを理解して使い分けた
□ 元データが日本測地系か世界測地系かを確認した
□ 平面直角座標系なら系番号(I系〜XIX系)を確認した
□ フィールド計算機の`$length`・`$area`はプロジェクトCRSへ変換されない点を踏まえて使った
□ CSV/DXFなど、CRS情報を持たない形式は提供元に測地系・系番号を確認した

筆者はQGIS公式プラグインリポジトリで座標系選択を補助する「Japan CRS Selector」などを公開しており、測量士補として業務でも座標系まわりのトラブル対応を行ってきました。今回の内容も、そうした実務での確認手順をもとにまとめています。


参考・一次情報


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最終更新: 2026年9月

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